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エボラウイルス病

エボラウイルス病

2014年10月20日、CDCはエボラウイルス病患者のケアにあたる医療者に向けた、PPE脱着の新しいガイダンスを発表しました。
Ebola: Personal Protective Equipment (PPE) Donning and Doffing Procedures

実際の動作が映像として公開されているうえに、一つ一つのステップの間に手指衛生を挟むなど、よく考えられていると思います。概要をパワーポイントにまとめましたので、日本の皆さんも是非一度ご覧下さい。

日本では、流行地から帰国した人が1か月以内に発症したら地域の医療機関に行かないようにと厚労省からアナウンスされており、一般の病院にいきなりエボラウイルス病の患者さんが訪ねてくる可能性は非常に低いかもしれません。しかし、新しい感染症が突然現れる事態は今後なくなることはないのです。新たなパンデミックが起きた時、行政が指導要領を作るまでには時間がかかります。どうかこの機会に知識だけでも身に着けて、医療者の皆さん自らを守れるようにしておいてください。

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エボラウイルス病ケア オブザーバーの配置と適切なPPE着脱法スライド表紙(手指衛生 総合サイト ハンドハイジーン研究会) 「エボラウイルス病ケア オブザーバーの配置と適切なPPE着脱法」 更新日:2014年10月20日
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さらに詳しい情報について

現在私たちが直面している、西アフリカでのエボラウイルス病流行にかかわる問題は数多くありますが、なかでもこれまで私たちが想定していなかった二つの点を指摘したいと思います。一つは、もちろんなんといっても史上類を見ないその被害の大きさです。いまだに毎週1,000人から2,000人の人が新たに発症し、その約1/3が亡くなり続けています。2014年12月13日現在の全症例報告数は18,498人、死者数は6,856人と発表されています。
http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/2014-west-africa/index.html
ただしこれは公式発表の数字であり、実際の数はこの1.5倍から2.5倍になるのではないかと推測されています(WHO推定、国によって異なる)。1976年に初めて確認されて以来、アフリカは散発的なエボラウイルス病の流行を経験してきましたが、いずれもここまで大きくなることなく制圧されるか、もしくは自然に消滅してきました。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/

もう一つの問題は、治療やケアに携わった医療従事者が数多く感染しているという事実です。ニューヨークタイムズの記事によると、2014年11月5日までに546人が感染、310人が死亡しています。
アフリカ以外から支援に入った医療者にも感染しました。2014年12月8日までに、アメリカ7人(医療者のみの数)、スペイン1人、フランス2人、イギリス1人、ドイツ3人、ノルウェー、スイス、イタリアのそれぞれ1人ずつ、の合計17人が感染し治療を受け、2人が亡くなりました。
国境なき医師団の活動としてアフリカに派遣された医療者は、2014年3月以降現在までおよそ700人で、そのうち感染したのは3人だということです。(以上 The New York Times, Ebola Facts)

映画のような針刺し事故でもない限り、先進国の医療従事者がケアの最中に感染することはほとんどないだろうと、これまで考えられていました。エボラウイルスはエンベロープを持ったウイルスであり、体液と粘膜や傷との直接接触がない限り感染しないとされていたからです(今でも医療者たちがどのようにして感染したのか明らかにされた例は、編集者が知る限りありません)(注1, 2)。したがってCDCは当初、たとえ患者が入院してもアメリカの病院では十分対応可能であると宣言していました。しかしとても残念なことに、予想に反してアメリカ国内で患者の治療に携わった2名のナースが感染しました。

SARSの流行後、WHOは専門家とともにそこで学んだ経験をレポートやガイダンスにまとめましたが、議論の中で医療機関における普段からの感染コントロールの徹底が重要であるという意見が多く出されたということです。
http://www.who.int/csr/sars/guidelines/en/

パンデミックが起きると、予期しない様々な事象が同時に起こります。人手が足りないと疲労は蓄積する一方です。そんな中、頭では分かっている当たり前の衛生手技が忘れられることもあり得ます。普段から、考えなくても正しい動作が出来るようにしておくことが重要です。準備して防げるはずの悲劇は絶対に防がなくてはなりません。

(注1)
各科学ジャーナルがエボラを特集しており、例えばScience誌では感染発症後回復した医師へのインタビューも掲載していました。さらに、回復した人たちの多くは退院セレモニーを病院で行い挨拶をしています。編集者はこれらをほとんど読み、聞いてきましたが、いずれの場合も、自分がどこで感染したのか分かっていないと話していました。

(注2)
これまで体液に直接接触することが感染ルートであると考えられていましたが、この流行の最中に行われている研究から、症状がピークの際には患者の皮膚からもウイルスが検出されること、咳による飛沫からも感染の可能性があること、ドアノブなど環境に付着したウイルスが数時間生存すること、などが明らかになったと発表されました。今後論文になっていくと思いますので、またあらためて情報をまとめたいと思います。