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感染症トピックス

2016年4月のトピックス - ジカウイルス感染症続報

カテゴリー:新興感染症

2016/04/28

 本トピックスでは今年1月に一度、ジカウイルス感染症情報を掲載しています。今回はその後の経過と情報をまとめてお送りします。勉強会用のスライドも作成しましたので、合わせてご参照ください。

<流行の最新情報>
WHO Zika situation report 21 April 2016

  • ● 2015年以降新たにジカウイルスのアウトブレークを経験した国: 42カ国
    このうち中南米は35カ国。それ以外にはフィジー、サモア等西太平洋地域の国もあります。
  • ● 2015年10月1日~2016年4月10日までに、コロンビアでラボ確定診断されたジカウイルス感染症例は3,292例。
  • ● 2015年よりも前にジカウイルス伝播が確認されている国(アウトブレーク終結宣言した国も含む): 17カ国 アジアと西太平洋地域の国は以下の通りです。
    アジア: マレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ラオス、バングラデシュ、インドネシア、タイ
    西太平洋地域: ミクロネシア、ニューカレドニア、パプアニューギニア、ソロモン島、バヌアツ

 

<胎児脳の異常との関連性>
 4月13日発行のThe New England Journal of Medicineに、米国CDCによるレビュー結果が論文として掲載されました。出生前のジカウイルス感染が小頭症およびその他の中枢神経系の先天性異常の原因であることが確認されたということです(1)。
ブラジルから小頭症との関連性が疑われる情報が蓄積し世間が注目する中、専門家はジカウイルスが小頭症の原因であると明言するのをずっと避けてきました。胎児に異常を起こすウイルス感染症の大きなアウトブレークは50年前の風疹以来であることと、ジカウイルスは以前から知られていたのに2013年の太平洋諸島アウトブレークも含めて今回のような症例報告はこれまでなかったことが、その大きな理由です。Shepardのクライテリアという1994年に提案された胎児先天性異常の原因を探るシステムに沿って、ジカウイルスの感染と胎児脳異常症例との関連性を確認したところ、クライテリア1、3,4そして6に合致することが明らかとなりました。全7のクライテリア中重要とされる1~4のうち1,3と4が合致したことは、胎児の異常の原因をジカウイルス感染とする十分な証拠であるとされました。

<流行地域>
 2015年後半から南米大陸で大きな流行が続いていますが、過去他の地域でも散発的な流行が見られており、アジアでも様々な地域で過去に流行が見られています。WHOのウェブサイトに過去の流行歴が掲載されています(3)。 1969年~1983年にかけてインド、マレーシア、インドネシアなどの地域で感染が報告されました。いずれも大きなアウトブレークという報告ではなくあくまで散発例ですが、この時代は検出技術も進んでおらず症状もほとんどが軽症だったということで、流行の真の姿が見えているわけではないと考えられます。
 2007年にアフリカ・アジアから太平洋諸島に流行が広がり、2013年ついにフレンチポリネシアで数千人が感染したと推定される大アウトブレークとなりました。
 日本は明日から大型連休に入るところですが、旅行先として気をつけなければならないのは、感染する可能性がある国は、現在大きな話題になっている地域だけではないかもしれないということです。ジカウイルスだけでなく、蚊は数多くの重症感染症の原因ウイルスや寄生虫などを媒介しますので、海外に旅行される場合は十分な対策をお願いします。

<ワクチン・治療薬の開発>
 免疫系を破壊した遺伝子組み換えマウスにジカウイルスが感染可能となることが、2つのグループから報告されています。実験系の確立という大きなステップはクリアされたことになり、米国を中心に研究費も投入されてきていますので、かなり近いうちに成果の発表があると推測されます。

<重症化のメカニズム>
 チクングニヤがレユニオン島で大きなアウトブレークを起こした理由は、ウイルスゲノムにおきた一箇所の遺伝子変異によって人へ感染性が増大したことでした。同じことがジカウイルスでも起きているかどうか、多くの研究者が興味を持っているところだと思われますが、まだそのヒントを示す報告はありません。デングウイルス感染に伴うADEのようなことが起きている可能性もあります。これに関するひとつの実験結果が、bioRxivにオンライン公開されています。この分野は今後さらに進んでいくものと期待されます。

(1) N Engl J Med. 2016 Apr 13. [Epub ahead of print]
Zika Virus and Birth Defects – Reviewing the Evidence for Causality.
Rasmussen SA, et al.

CDC press release:
(2) eLife 2016;10.7554/eLife.15272
Mapping global environmental suitability for Zika virus
Jane P Messina, et al.

(3)WHO Zika virus timeline

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