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感染症トピックス

2016年5月のトピックス - カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

カテゴリー:多剤耐性

2016/05/31

 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は欧米で検出率が高いものの(10-25%)、日本の大腸菌(E. coli)や肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)での耐性検出率は、これに比べてかなり低いと言われています。しかし感染症の場合、罹患率・検出率・耐性獲得率などを、異なる国や施設間で数値として比較するのは一般的に非常に困難です。同じプロトコールで実施された他施設共同研究でない限りは、数字の分母や分子の意味が違うのが普通だからです。
 日本の医療施設で耐性菌が検出される場合、一般的に次のような流れの結果であることが多いと思います。
発症 → 細菌分離 → 耐性検査 → 耐性に関わる因子の解析(ここまでやる場合は)
一方、カルバペネム耐性を与えるメカニズムのひとつにカルバペネム分解酵素(Carbapenemase)の生産があり、この酵素の有無を調べたり、コードする遺伝子を検出するのが耐性菌を迅速にかつ大量に調査するのに良く使われます。ところがここで問題なのは、酵素の存在と多剤耐性とは必ずしも一致しないというところです。
 たとえば文献(1)や大阪でのアウトブレーク(2)で報告されたように、日本で報告されたカルバペネム分解酵素はIMP型が多く、イミペネムに感受性であったり多剤耐性を示さない場合があることが分かっています。つまり、上記のように先に耐性検査を行うとMBL(メタロβラクタマーゼ)産生菌が過少に検出される可能性があります。
 現在MBLやESBLを選択的に培養する培地が入手可能です。このような選択培地でまず検体スクリーニングしたのちに、耐性を確認するという手法をとった日本でのある疫学調査によると、MBL産生菌の分離率がこれまで言われているよりはるかに高いことが明らかとなったそうです。分離されたMBL産生菌はIMP-6が多く、多剤耐性ではなかったということです。
 カルバペネム分解酵素の解説や、IMP-6型プラスミドの臨床上の意味など、詳細につきましてはツールにまとめて近いうちに公開する予定です。しかし、プラスミド性の耐性遺伝子は腸内細菌科細菌間で簡単に受け渡しされることから、複数の施設を転院する高齢の方々の間ですでにかなりの割合で存在していることは想像に難くありません。今後スクリーニングや疫学調査が進めば、真の感染率が見えてくると思います。感染症を発症していない患者さんであっても、その腸の中にMBLやESBL産生菌がいるものと考えて、標準予防策を講じていくことが、唯一確実な対策であると考えられます。
 

文献
(1) Antimicrob Agents Chemother. 2001 May;45(5):1343-8.
Plasmid-encoded metallo-beta-lactamase (IMP-6) conferring resistance to carbapenems, especially meropenem.
Yano H, et al.

(2) IASR <速報>大阪市内大規模病院におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の長期間にわたる院内伝播
IASR Vol. 35 p. 290- 291: 2014年12月号

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