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感染症トピックス

2016年1月のトピックス -ジカウイルス

カテゴリー:新興感染症

2016/01/29

 昨年後半から南米を中心に流行が続いているジカウイルス感染症は、妊娠初期における感染と胎児脳の発達障害との関連性が示唆されており、世界的な問題になっています。
日本時間の今朝早く(1月28日)WHOは、2月1日にIHR(国際保健規則、International Health Response)緊急委員会を召集し、PHEIC (Public Health Emergency of International Concern)とするかどうかを討議すると発表しました

 中南米におけるジカウイルス感染被害とされる報告は増加する一方で、ブラジル保健省は2016年1月27日、ジカウイルス関連と疑われる報告がこの1週間で287人追加されたと発表しました。疑い例の累積報告数は4,180例になりましたが、このうち小頭症であると診断されたのは270例で、多くはほかの原因によるものであったとも報道されています。さらに実際にウイルスが分離されたのはこの中の6名だけだそうです(2)。米国CDCはレベル2の警報(Alert)を発表し、妊娠中の人の流行地への渡航を考え直すように勧告しています。いくつかの航空会社はすでに、妊娠中の人の流行国への渡航チケットの変更や払い戻し対応を始め、エルサルバドル政府は国民に対し2018年まで妊娠を控えるようアドバイスしているそうです(3)。
 
 ジカウイルスの流行は以前からアジア・アフリカで見られ、2年ほど前にもフレンチポリネシアでアウトブレークが発生したばかりですが、今回ブラジルで報告されているような新生児の異常との関連は報告されていなかったようです(記録の再調査などで見つかる可能性もあります)。今回のブラジルにおける小頭症の異常増加の原因が本当にジカウイルス感染なのか、まだ完全に確かとはいえませんので先走った憶測は禁物です。しかしこれがもしジカウイルス単独の感染によるものだとすればウイルスの変異かもしれませんし、むしろそれよりも複合的な感染や過去の感染によるヒトの免疫状態の違いが関係するという可能性も考えられます。ブラジルは黄熱やデング熱が多い地域です。今後明らかにすべき課題が多く提示されました。

これまでの経緯とジカウイルスの基本情報をパワーポイントにまとめ、感染症トピックスページにアップしましたのでご参照ください。

(1) CIDRAP NEWS Jan 27, 2016 
(2) The New York Times Reports of Zika-Linked Birth Defect Rise in Brazil
(3)The New York Times Zika Virus ‘Spreading Explosively’ in Americas, W.H.O. Says

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